目次
- 1 電子カルテにまつわる課題
- 2 在庫管理にまつわる課題
- 3 薬歴管理にまつわる課題
- 4 院内コミュニケーションにまつわる課題
- 5 勤怠管理や給与計算、会計にまつわる課題
- 6 まとめ
IT技術の進歩がめざましい現代において、これまで様々なITツールが誕生し多くの業種・分野で活躍しています。医療機関においては、従来の手書きカルテや目視での在庫等管理、また人材不足に伴う医療従事者への負担増など様々な課題があり、こうした課題を解決するために様々なITツールの導入が進んでいます。
ここでは、こうした流れに対してIT導入補助金を活用した事例を各カテゴリに分けていくつかご紹介いたします。
※本掲載内容は、IT導入支援事業者の登録ツール・交付申請の要件等を担保するものではありませんのでご注意ください。
電子カルテにまつわる課題
ケース1)紙媒体のカルテを探す手間や電話予約対応の負荷
開院以来、ITリテラシーが低く手書きのカルテを続けていた。しかし最近は近隣のクリニックや介護施設と連携した治療を行う機会も増え、情報共有の都合上、電子カルテに移行する必要性を感じていた。
また、毎回患者さまのカルテを探すのに時間がかかり、スムーズに受付ができないだけでなく、看護師の仕事も滞ってしまう。受診中に予約受付の電話を受けることもあり、負荷が大きい。
課題解決のためのITツール概要
電子カルテツールを導入。患者情報やカルテを電子化することで、カルテの検索をスムーズに。予約もオンラインで受け付けることで、受付の手間が削減。また、電子化によりスタッフ間、地域間での情報連携もスムーズに。
導入効果詳細
これまで紙で管理していたデータを電子カルテにすることで、診察券番号から患者さまのカルテをパソコンで検索し、情報を容易に引き出すことが可能になるだけでなく、電子化することでセキュリティ面も向上。さらに、オンラインの予約受付を導入することで、電話対応にかかる時間と手間が大きく削減。
また、手書き入力も可能な電子カルテでリテラシー課題もクリア。クリニックのニーズに合わせたカスタマイズが可能なためチーム医療による治療をサポートが可能に。
カルテの治療情報とレセプトもリアルタイムで連携しているので、会計にかかる時間も削減可能となった。
ケース2)個人情報と電子カルテの照合での手間やミス、セキュリティ上のリスク
患者さまのお名前や住所などの個人情報と電子カルテに記載された治療履歴。それぞれを別に管理すると情報の照合に手間がかかるだけでなくミスの発生にも繋がるため、仕方なく両者を紐づけて管理していた。しかし重大なプライバシーに変わるこれらの情報が紐付けられた状態で、複数の院内スタッフが目にすることができるのは、セキュリティ上リスクがあった。
課題解決のためのITツール概要
個人情報と電子カルテの情報を別個に管理できるRPAルールを導入。必要なタイミングでRPAツールが自動的に照合できる環境を整える。
導入効果詳細
会計時など必要なタイミングで両者の情報を合体させるのはRPAツールに任せることで、プライバシーに深く関わる情報を目にするスタッフが最低限に抑えることができ、患者さまに対するセキュリティ環境が向上した。
ケース3)診療報酬の点数計算やレセプト管理の手間が大きい
診療報酬の計算やレセプト管理、とにかく点数計算が大変で、とても時間がかかってしまう。
課題解決のためのITツール概要
電子カルテを導入し、点数計算や窓口での会計業務を一元管理。
導入効果詳細
電子カルテの情報と点数計算やレセプト業務を連動して行うツールを導入することで、煩雑だった計算の正確性改善。また、自動的に行える処理も増えるので、作業時間も大きく削減となった。
ケース4)検査機器とカルテ内容の確認の手間とミス発生リスク
レントゲンなどの検査機器の情報と患者さまのカルテ。これらの情報をスタッフの目と手で確認しながら組み合わせていたが、時間がかかるうえに、組み合わせを間違えそうになることが多々あった(歯科医院)。
課題解決のためのITツール概要
各種検査機器と電子カルテの情報を連携できるツールを導入。
導入効果詳細
検査機器を電子カルテとシステム連携することで、毎回検査結果とカルテを一つひとつ付き合わせながらセットしていくというスタッフの負担が軽減された。また、レセプトなどさまざまなツールで作成された情報も同時に連携。複数のツールを保険証番号で一元管理できるので、情報の入力ミス削減にもつながった。
ケース5):患者の家族関係などの把握不足による提案機会やアドバイス機会の損失
地域密着型のクリニックでファミリーで通院される患者さまが多いが、カルテの情報だけでは家族関係がわからなかった。そのためお子さまの治療状況やケアのアドバイスなどを、ご家族へ伝える機会が得にくかった(歯科医院)。
課題解決のためのITツール概要
自宅の固定電話番号によって患者情報を管理できるツールを導入することで、家族の情報を連携。
導入効果詳細
患者さまの情報を固定電話の電話番号によって管理することで、同居している家族の関係を把握でき、家族の治療状況の連絡や、自宅でできるケアのアドバイスが可能に。これにより、家族ぐるみで歯の健康に向き合うための支援を実現した。
ケース6)高齢化に伴う訪問治療ニーズの高まりに対する対応の遅れ
高齢の患者さまの増加により、地域医療の連携や訪問診療のニーズが高まってきている中、院外に出ても患者さまの治療履歴や検査結果などが確認できるような環境を整えて、訪問診療にもっと前向きに関わっていきたいがどのようにすればいいかわからず悩んでいた。
課題解決のためのITツール概要
ノートパソコンやタブレット端末で確認できる電子カルテのシステムを導入。
導入効果詳細
訪問診療では訪問先へ向かう前に、紙に書き込まれたカルテ情報や添付されたレントゲン写真、過去の検査データなど診察に必要な情報をまとめて持ち出すことが必要だった。
カルテを電子化し、さらにレントゲンや検査のデータとも連携させてノートパソコンやタブレット端末で確認できるように管理することで、その準備にかかる時間や手間の削減につながった。また、出先でも診察室にいるときと同じ情報をすぐに把握でき、患者さまにより的確な治療やアドバイスを行えるようになっただけでなく、近隣クリニックとのカルテ情報共有も可能となった。
在庫管理にまつわる課題
ケース1)煩雑な医療器具や消耗品、薬品の在庫管理や受発注納品チェックなどの負担過多
治療に欠かせない医療器具や消耗品、薬品などは、在庫を切らすわけにはいかない。しかし種類が多いこともあり、在庫の管理が煩雑になりがち。発注や納品のチェックにも時間がかかるため、管理している事務スタッフの負担が大きくなっていた。
課題解決のためのITツール概要
電子カルテと連動させたRPAツールを導入。治療の際に必須となる医療器具や消耗品、薬品の在庫が規定以下になった場合に、自動的に発注、在庫登録を行う環境を整える。
導入効果詳細
在庫が院内で登録した規定よりも少なくなるとRPAツールが自動的に仕入れ先にメールを送り、商品を発注できるように設定することで、納品された品物を事務スタッフの目で確認した後は、RPAツールが在庫として登録。自動化されたことで、在庫切れのリスクがなくなっただけでなく、多品種の情報管理や登録の手間も軽減され、在庫管理に関する事務スタッフの手間や作業が削減。
また電子化した在庫情報を電子カルテのデータと連動させることで、患者さまの治療状況に合わせて必要な薬剤を確実に用意できる環境へ。納品から入荷までの情報を電子的に処理。在庫数に加え、使用期限などの情報も同時に管理が可能に。
薬歴管理にまつわる課題
ケース1)薬歴情報を紙管理でのスペース不足や、データ入力の時間過多
薬局内が狭いので、患者さまの薬歴情報を紙で保存しておくための場所を確保することが難しくなってきた。また薬歴情報を入力するためのパソコンを複数台置けるスペースもなく、データ入力のために順番待ちをしている時間が無駄になっている(調剤薬局)。
課題解決のためのITツール概要
タブレット端末で操作できる電子薬歴ツールを導入。薬歴を電子化して管理。
導入効果詳細
薬歴を電子化し、薬剤師一人ひとりに用意したタブレット端末で操作・管理できる環境を整えることで、情報の保存や入力作業を省スペース化。投薬に関わるすべての患者情報を一元化して管理。
タブレット端末で、薬歴情報をいつでもどこでも確認できるようになることで、在宅医療や訪問看護の現場と連携した投薬指導も実現可能に。
院内コミュニケーションにまつわる課題
ケース1)医師・看護師・スタッフ間の口頭のやり取りによる伝達ミス等
医師と看護師、受付スタッフのやり取りは口頭で行われていた。そのため伝え漏れや聞き間違いが起こってしまい、患者さまに伝えるべき情報が伝わらないことがよくあった。
課題解決のためのITツール概要
電子カルテに院内チャットの機能を組み合わせて利用できるツールを導入。
導入効果詳細
電子カルテ情報に院内チャットを紐づけることで、誰に対して何をすべきなのかを文字として記録。それにより伝えるべき情報が履歴として残り、複数のスタッフにて情報共有可能に。また、全スタッフとの情報共有が容易になるだけでなくコミュニケーション品質の向上も期待できる。
勤怠管理や給与計算、会計にまつわる課題
ケース1)手書きのシフト管理による手間や計算ミス等
手書きのシフト管理をしており非常に手間がかかっていた。また、月末になると給与計算や経費精算など、経理担当社員に業務が集中して大変。忙しい時期に担当者が体調を崩してしまうと、経理業務が立ち行かなくなり大きな影響が出てしまう。
課題解決のためのITツール概要
勤怠管理や給与計算等のRPAツールを導入。社員の給与計算や経費精算のルールを定義づけし、金額の算出を自動化。定められた金額の振込まで自動で行える環境を整備。
導入効果詳細
登録したルールに基づきRPAツールが給与を算出可能に。加えて金額を経理担当者の目で確認後、RPAツールが給与をオンラインで振込、さらに振込情報を社員本人や経理担当者にメールで送付する設定も実施。計算や振込が自動化されたことで、経理担当の業務的、時間的負荷が大幅に軽減。全て勤怠管理ソフト上で作成出来るようになり、日々の出退勤もPC上で管理。そのデータを利用して給料計算も可能なため事務の効率もUPし給料日前の残業時間削減にもつながる。
まとめ
いかがでしたか?これまでのIT導入補助金を活用したツールの導入事例でした。
これまでのIT導入補助金では、患者管理や訪問診療への対応、会計業務にかかる時間の削減のため、電子カルテやレセプト管理、会計業務の効率化に対応するITツールが多く導入されています。
クリニックの規模や看護師をはじめとする従業員の数によっても、取り組むべき課題は異なります。
自社の状況に近い悩みから、導入すべきITツールの機能を見つけていきましょう。
※本掲載内容は、IT導入支援事業者の登録ツール・交付申請の要件等を担保するものではありませんのでご注意ください。